A long time ago in a galaxy far, far away….
映画『スター・ウォーズ』より
グラニーさんは故郷タトゥイーンから遙か彼方のナブー病院に入院しました。
【主な登場人物】
グラニーさん(77)私の母。
私(41)グラニーさんの娘。
療養型のナブー病院(仮称)に入院したグラニーさん。コロナ禍ではオンライン面会しかできません。“今生のお別れ”に私はグラニーさんの爪を切りました。
入院で持ち込める物は、限定されています。
靴、カーディガン、櫛、たったそれだけ。
※男性の場合は、櫛の代わりに髭剃りですって。
グラニーさんが最後に買った医学書も、
それを読むための虫眼鏡も、
仕上げようと思っている論文を書く鉛筆も、
置いておけません。
グラニーさんは、その身一つになりました。
入院は、オシャレも手放さねばなりません。
彼女はもう
オーダーメイドのセットアップを着て
お気に入りのパールのブローチを着けて、
お化粧をして、帽子をかぶって、
娘と美術館に行くことは
もう、ない。。
だから、私は言いたい。
「持っているダイアモンドは今すぐ着けよう」
「お気に入りのヒールは雨の日以外は履こう」
とっておきの物は、とっておかない方が良い!
私はグラニーさんの衣類を処分すると同時に、入院用の靴、カーディガン、櫛を新しく買いました。
写真が実際に選んだ、カーディガンと櫛です。
入院用ではなく、母の日だと思って選びました。
グラニーさんの好きな緑色、キラキラしたボタン、温かいニットのカーディガン。
昔よく二人で買い物に行って喧嘩ばっかりしてたなぁ、と思い出しながら買いました。
ところが現実は。
結局、彼女が持ち込んだ物は、今まで使っていた靴と上着でした。
“新しい物”や“上質な物”は彼女には、
=使いにくい物なのです。
結局、私が彼女にプレゼントできた物は、百均の櫛でした。
歯がゆい
解せない
せめて何か
私はこの期に及んでも悪あがきを止められません。
百均の櫛に「お母さん私を育ててくれてありがとう」と書きました。
読まなくてもいいから
気づかなくてもいいから
結局は、私のために書きました。
追記;次回が最終回です。
2020年10月17日ふみっ記