
第12話『肖像権』
歴史上の人物を育てていると思え
とは、認知症の母の教え。
息子が1つできるようになる度に「彼は天才だ」と心から思える。親馬鹿であることが、こんなに愉快だとは知らなかった。
今、私は卒園ムービーを作っている。
映像をYouTubeにアップしたら任務完了。
パスワード付きの非公開。
映像制作って孤独だなぁ、といつも思う。コンピュータに向かって、ひたすらコツコツ作業。映像の中身、被写体やBGMは華やかだけれど、制作は地味。
第一、作業している時の服装とか髪型が、ほんとにボサボサ。
コーヒーも、めっちゃ飲む。
そして大抵、夜中仕事。
気がつけば猫背。
YouTubeは、パスワード付き非公開とは言え、必ず17家族に許可を取る。
作っていいですか、の許可ではなくて、
インターネットに載せて良いですかの許可を取る。
ここに映る17名の園児たちは、世界を救うスーパーヒーローになる可能性があるから。
ハリウッドスターになってゴールデングローブ賞、科学者になってノーベル賞、あとは何だろピューリツァー賞とか、あらゆる可能性がある。
その反対に、万が一の映像流出によって嫌な思いをする可能性も否めないから。
リスクをご家庭で判断していただきたく、大袈裟に確認する。
そして、このムービーを、卒園後も何度も繰り返し観てほしいと思っている。
懐かしいとか、可愛いとか、何か落ち込んだ時に観るのも良いかもしれない。
赤ちゃんから今日まで、生きてきた彼らの4年間の記録。
長い人生の中の、たったの4年間を10分間にまとめている。
まとめきれるもんじゃないけれど、彼らの輝かしい健やかな4年間の人生を、ダイジェスト版だと思ってテンション上げて編集している。
次回、第13話『謝辞』
2021年3月10日ふみっ記